乾口(ひくち)について
乾口とは金粉等の漆芸材料の粉を蒔く際に塗った漆の表面をある程度乾かすことをいいます。
漆の表面を乾かさずに粉を蒔くと漆が粉を吸ってしまい表面がざらつき仕上がりが悪くなるので 漆の表面をある程度乾かすことで漆が粉を吸うのを防ぎ表面を滑らかに仕上げます。
鎌倉彫りの塗りでは上塗りをした後、乾口をとりマコモという植物の粉や煤玉(すすだま)という焼いた土の粉を蒔きます。
漆が乾いたら耐水ペーパーで好みの色が出るところまで研ぎ、拭き漆でつや上げをして仕上げます。
鎌倉彫りではこの様な塗りを乾口塗りと称しています。
まず、朱漆の上塗りをします。
そして室に入れて上塗りした朱漆をある程度乾かします。漆の乾きの速さや室の状態により乾かす時間が異なるため乾口のタイミングをとるのは非常に難しいです。
乾口が来たら室から出しマコモの粉を蒔きます。マコモの粉は画像の様に茶色で非常に粒子が細かいです。
マコモを蒔き終えたら室に入れて乾かします。下の画像の右側のテストピースはマコモを蒔かずに朱漆を乾かしたものです。マコモを蒔くことによって色と質感が変わったことが分かります。
耐水ペーパーで水研ぎをして朱色を出していきます。
水研ぎを終えたら拭き漆を数回施しつやを上げます。
彫刻を浮き立たせるために拭き漆をしてからイボタ蝋という白い研磨剤を蒔き、彫刻の際にイボタ蝋を入れていきます。
そして完成です。以上がマコモの乾口塗りの工程でした。